2014年11月30日日曜日

IMCO TRIPLEX SUPER 6700 & JOHNNIE WALKER RED

IMCO TRIPLEX SUPER 6700 & Johnnie Walker Red
このオイルライターとの出会いは、もう10年以上前になるが。
それは、友達を通してだった。

仮に、ここではその友達を社長と呼ぶことにする。
社長は、ヘビースモーカーだった。
いかにも体に悪そうなセブンスターに、幾度となく火を付けていたのが、これと同じオイルライターだった。

オイルライターと言えばZippoが有名だが。社長のは違っていた。
社長の手にあったのは縦長で100円ライターのような。
でもそれよりは趣のありそうで、しかし、ブリキのおもちゃのようなオイルライターだった。

でも、100円ライターと言うのはあながち間違っていなかった。
ブリキのおもちゃと言うのも、メッキがスズかニッケルかの違いで当たらず遠からずである。
そのブリキのようなおもちゃで、バチンと火花を散らしながら、社長は言った。
「これ、やっしぃーんだよ。(安いんだよ。)」

そう、このライターは安かった。
Zippo風ライターは、それこそ今では100円ショップでも売ってるが。まともなZippoを買おうとすると数千円はする。
なのに、このライターは1000円しないのである。
しかも、安いからと侮れない実用性が、このライターにはある。

それは、元々このライターは、第一次世界大戦の経験を得てオーストリアで生まれた軍用品だからである。
軍用品として大量生産する故の簡素なつくり。歴史はZippoより古く、創業以来ほぼ一貫して改変されていない構造。徹底的に実用品として作られたが為の低価格なのである。
また、比較的どんな環境下でも着火出来るオイルライターの強みがある。
そして、その所作には無駄が無い。有名なZippoが2アクションで火を着けるのに対して、このライターは1アクションである。
他にも、火をつけた状態でオイルタンクを抜き取れば、ろうそくのように明かりとして使うことも出来る。
消耗品は、各社がこのライターの規格にならって作っているため流用が可能である。但し、Zippoのフリントについては、その固さでライターを痛める為、推奨されていない。
極め付けに、ちょっと派手なアクションでフリントを交換するギミック。と言う愛嬌まである。
「用の美」と言う言葉があるが、このライターは正にこの言葉が当てはまるのである。


このライターで火をつけると思い出すのが。
学生寮のみんなで春先の海岸へ行き、焚き火で暖をとりながら一夜を過ごしたあの頃である。
何を話していたかは、もう覚えていないが。
焚き火を囲みながら、このライターで煙草に火をつけ。誰かが(恐らく社長が)持ってきたジョニ赤を回し飲みする。

赤い炎に照らされるジョニ赤の瓶と社長の横顔。
文字通り同じ釜の飯を食う友達、先輩、後輩たちの談笑する姿。
遊泳禁止の暗い海から聞こえるちょっと荒々しい波の音。
焚き火の暖かさ。
そして、次の煙草に火をつける社長のライターの音。

このライターの火の先に見えるのは、紛れも無い青春の一ページなのである。
「青臭い春」と書いて青春と言うが、このライターのフィルターを通して見えてくるのは、
オイルの火で青臭さが焼き落とされた、清清しい若者たちの一ページである。

その安さから、このライターはオイルライターの入門機として若い頃に使う人が多いと聞く。
実用的な道具としてだけではなく、使う人の思い出まで灯す。そんな所が永く愛され続けるこのライターの魅力なのかも知れない。

そう言えば社長は元気だろうか。
携帯やメールと便利な世の中だが、お互いに住むところが遠くなり疎遠になってしまった。
彼の実家の住所を書いたメモが、自分の実家にあったはず。
自分の実家も当時とは変わってしまった。
もう届かないかも知れないが、今度手紙でも書こうかと思う。
この写真を絵手紙に、懐かしい気持ちを共有出来ると良いのだが。

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